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孤独な上司

会社の同じフロアで長い間一緒に働いてきた僕の上司が、去年一杯をもって退職した。不惑の40代を直前に控えた上司(以下:F氏)は、自分の為に家族の為にと意を決して、異業種への転職という道に踏み切った。

責任感が強くて、頭の回転が早く、ロジカル・シンキングに長けたF氏は、合理的に効率よく仕事をこなす事で一定の評価を得ていた反面、プライドが高くて融通が利かない為、冷徹で何を考えているか分からない印象を同僚に与えていた。プライベートな会話の場面でのF氏は人当たりがよく、そのトークは生まれ育った関西で揉まれた軽妙なものだったが、そのプライベートな会話の機会自体が極端に少なかった。砕けた話をF氏の方から切り出してくる事は滅多になかった。

元々F氏は、会社での人間関係をドライなものと割りきっているフシがあった。融通の利かないF氏のやり方に耐え兼ね、F氏に改善を直談判した部下は一人や二人ではなかったが、その都度彼は、断固とした態度でその訴えを退けた。柔和な笑顔の裏側に、そこはかとなく近寄りがたい雰囲気をかもし出すF氏の姿は、例えるなら現総理大臣福田康夫氏のようであった。同僚たちは、次第にF氏に距離を置くようになっていった。彼は孤独な上司だった。

F氏の転職先は、親戚のつてを辿って紹介されたものだという。異業種への転職だが、学生時代に学んだ事を活かせる職業らしい。しかし転職に際して本当に活かさなければならないのが、今までのキャリアで培ってきた人間としての総合力である事は、F氏自身も充分承知していると思う。

兎にも角にも、彼は彼なりにガムシャラに突っ走ってきた。僕はその事を凄いなと素直に思う。彼の経験が次の職場で花開く事を、僕は切に願っている。もしかしたらどこかでこの記事を目にするかもしれないF氏へ、ささやかなエールとして僕はこのエントリーを捧げたい。お疲れ様F氏。今の職場でも、やりたい事は思う存分挑戦してください。気高き孤独を身に纏う素敵な上司になれるよう、心から応援しています。

ミツより。