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けんかをやめて

今から8年位前のこと。ひょんなことから僕が「一皮むけた」経験を、ひょんなことから思い出したので、忘れないうちにちょっと書き綴っておこう。

1982年に第24回日本レコード大賞金賞を受賞した、河合奈保子の「けんかをやめて」という曲をご存知だろうか。「けんかをやめて/二人を止めて/私のために争わないで/もうこれ以上」というサビで有名な、竹内まりや作詞のあの曲である。

当初この曲が世に出てヒットを飛ばした時、僕はこの曲を聞いても特に何の感慨も抱かなかったのだが、思春期に突入する中学生の頃になると、いつしか僕はこの曲を毛嫌いするようになっていた。その嫌悪感の矛先は、この曲の主人公である女の子に向けられていた。僕はこの女の子に、「悲劇のヒロインぶって」いるような印象を受けたからだ。

この曲に対する嫌悪感は、僕が二十歳を過ぎてもまだ消えることはなかった。しかしある日を境に、僕はこの曲の印象がガラリと変わったのを覚えている。あれは確か僕が24~25歳の頃。会社のラジオで、文化放送の『えのきどいちろう意気揚々』という番組を聞きながら仕事をしていた時のことだ。(えのきどいちろう氏のプロフィールはこちら

番組内でえのきど氏が、文化放送アナウンサーの水谷加奈ちゃんに、「けんかをやめてという曲を聞いてどう思うか」と尋ねたところ、加奈ちゃんは「悲劇のヒロインぶって感じ悪い・・・」云々とコメントした。僕はこのコメントを聞いて、やっぱり同じように思う人はたくさんいるのだなぁと思った。ところがえのきど氏は加奈ちゃんのコメントを受けて、次のように返した。(うる覚えです)

「僕はこの曲結構好きです。それは、この曲に登場する女の子が好きとかそういう話ではなくて、この曲の“作品”としての部分が好きだという意味です。作詞を担当した竹内まりやさんの着眼点が素晴らしい。悲劇のヒロイン気取りだなと反感を買うのは承知のうえで、そういった要素をあえて歌詞の中に盛り込んでいます。僕は「うんうん、こういう女の子っているよねー、分かる分かる!」的な感じで、この曲を楽しめるのです。」


えのきど氏のこのコメントを聞いて、僕は目から鱗が落ちる思いだった。なるほどそういう解釈もあるのか、と。この曲に対する嫌悪感がちっぽけな物であることに気がついてしまった。そしてふいに、「大人になるという事」という疑問に対する、自分なりの答えが見つかったような気がしたのだった。それは「許容する」という事。或いは「分かってあげられる」という事。この時の放送を聞いて以来、僕は大人になるという事を、そういう風に解釈してきた。自分の中の「許容範囲」を広げるため、色々なことを見聞し、体験し、自分のものにしていこうとあの時僕が感じた想いを、これからも忘れる事がないように努力していきたい。