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Artist meets artist /言葉をさがして(3)

佐野元春と小川洋子の対談(朝日新聞1月21日付夕刊)記事も今回で最後。音楽や文学に対する、誠実で謙虚な姿勢が窺える内容の濃い対談は、ふたりの優しい人柄がそのまま滲み出ているようだ。


佐野
小説を書くときに取材はするのですか。

小川
あんまり取材する方ではなくて、偶然出会った言葉や音の響きから、ラストシーンが決まることもあるんですよ。

佐野
歌をつくっていくとき、僕はレコーディング中の偶然を期待しません。最初に浮かんだのが、すべてだというところから始めています。最終形が浮かんでいて、それを細かく分解して、分解したものをひとつひとつ作っていって、最初のイメージに近づける作業です。

小川
音楽は最初に完成形で頭の中にあるんですね。言葉って不自由なんですかね。音よりも恥ずかしがり屋なのかも。

佐野
あらゆるメロディーの中にはすべてに言葉があって、それを引き出すのがソングライターの仕事。メロディーに隠された真の言葉を引き出すのは、宝物をみつけるような喜びがあって、なかなか引き出せない。これも違う、あれも違う。こうなると、いつになったら終えられるのだろうか、そういう焦りがあります。

小川
小説も全く同じです。洞窟の壁面を削って、発するべき言葉を発せないまま死んだ人の言葉を掘り出し、小説という形を借りてよみがえらせる。そうしないと、ものすごく美しい奇跡が隠されているかもしれないのに永遠に埋もれたままになってしまうから。メロディーの中に隠されている言葉を引っぱり出そうとするのと同じように、目に見えていない言葉を探しているんですね。

佐野
いい曲が書けた時は、何か自分の才能でもって書いたというよりかは、どこかこう導かれて、音ができてどうもありがとうっていう感覚がありますよ。

小川
そうなんです。満足のいく作品ほど、自分がゼロからやったんだっていうおごり高ぶった気分になれないんですよね。謙虚な気持ちがなければ、導いてくれる何かとも出会えないんです。■

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by BlueInTheFace | 2005-01-30 01:54 | 音楽

Artist meets artist /言葉をさがして(2)

「ARTIST MEETS ARTIST」佐野元春と小川洋子の対談記事第2弾。


b0011238_213918.jpg佐野
先ほど時代をうたった歌とおっしゃいましたが、自分も現代に生きているわけですから、現代の社会と切り離して歌を作るわけにはいきません。しかし、時代をうたう歌というのは非常に陳腐化しやすい、時がたつと普遍性を持ち得ないものになりやすいということは、ソングライターとして自覚しなければならない。

小川
音楽、歌は未来に向けて書いているところがあるんですよね。ところが、小説を書くという仕事は、いつも過去を向いているんです。小説はこう、常に死者を書いているんです。死者の国に行って、名もない死者の手を引いて、ひとときの本の世界に連れて行って、それで書き終わったときに死者の世界に送り返すっていう。そこがね、音楽と小説の決定的な、おもしろい違いだなあって。

佐野
それはシャーマン的な、鎮魂の意味があるのですか。

小川
あの、たぶん人間が誕生した時に、洞窟に住んでいたと思うんですね。で、まず自分を表現しようとしたときに歌はあったと思うんです。で、そこに転がっている石で、やっぱり壁面に何か書き残したと思うんですよ。災害を鎮めようとか、祈りに近いものだったのかもしれないけど。

佐野
それはすごくおもしろい話ですね。僕もいろいろな曲や歌を聴いてきましたけど、心に残っているのは、どこか祈りが含まれている。それは本当にたわいもない「ボーイ・ミーツ・ガール」の歌であったりするのですが、僕自身はもう少し深い、祈りに近いものを感じとる。すると、その曲はたちまち大事な曲となるんです。

小川
受け取る側は、作り手が込めた何倍ものものを受け取るということなんですね。

佐野
1万人がいたら1万通りの感受性がある。だから、自分よりも豊かな、様々な感受性に対する畏[おそ]れがあります。

小川
ですから、ものを作っていくということは苦しいのは当たり前なんですよね。迷ったときに、より苦しいほう、より苦しいほうに進まないといけない。途中で投げ出さないで、毎日作品の前に座り、最後の1行、最後の1音までたどりつくっていう、そこが、自分にとっての生命線ですね。

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by BlueInTheFace | 2005-01-29 02:15 | 音楽

Artist meets artist /言葉をさがして(1)

会社の先輩Hさんが、佐野元春を好きな僕が喜ぶだろうと、1月21日付朝日新聞夕刊をわざわざ僕に持ってきてくれた(Hさんサンクス!)。「ARTIST MEETS ARTIST」という著名人どうしが対談するコーナーが設けられていて、そこに元春が登場していたのだ。対談相手は、元春ファンの間ではかなり以前から有名な人だったが、今や飛ぶ鳥を落とす勢いの小説家、小川洋子さん。二つの巨大な才能が交わった、興味深い対談内容だ。さっそく、当ブログにてアップしてみたい。(しかし、いざ文字おこしをしてみると結構長いので、僕のほうで勝手に3回に区切って掲載することにしました。)


佐野元春
ミュージシャン。56年、東京都生まれ。80年、シングル「アンジェリーナ」でデビュー。「ガラスのジェネレーション」や「サムデイ」、「ヤングブラッズ」、「クリスマス・タイム・イン・ブルー」などヒット曲多数。昨年、4年半ぶりのアルバム「ザ・サン」を発表。

小川洋子
作家。62年、岡山県生まれ。早大第一文学部卒業。91年『妊娠カレンダー』で芥川賞受賞。『博士の愛した数式』で第1回本屋大賞と04年読売文学賞、『ブラフマンの埋葬』で同年泉鏡花賞を受賞。『ホテル・アイリス』ほか10作品以上がフランスや米国で翻訳されている。


b0011238_214571.jpg小川
デビューされて・・・・・・。

佐野
25年です。

小川
デビュー当時と同じ新鮮な感動で新作を味わえるのは、私にとって佐野さんだけなんです。まだ20歳前の初めて聞いたときの感動が今でも色あせずに生きています。

佐野
ありがとう。でも、25年も続けられるとは、正直言って思っていなかった。音楽は感情にまかせて作るものだと思われがちですが、自分の中でひとつひとつ理屈を積み上げていく、建築物のようなとても地道な作業が必要です。新作の「ザ・サン」を発表するのにも4年半という時間が必要でした。10代の多感なころから聞いているビートルズの「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」やビーチボーイズの「ペット・サウンズ」なども、実に論理的で理知的に構築されています。

小川
文学でいえば、俳句がそうですよね。五・七・五、それぞれに素数。足すと十七でこれも素数。論理的な、しかも最小限の世界の中に言葉を置くと、ときに宇宙の摂理を表現できたりする。佐野さんの「アンジェリーナ」を初めて聞いたときの事をよく覚えています。まだ学生でしたが、テーブルをばんとたたいて、何なんだこれは、と思った。曲名は女性の名前ですが、ただ女性を歌うだけではなく、1人の人間を歌い、同時に街や時代も歌っている。重層的なんですよね。

佐野
詩を書くときは映画の撮影現場でいうキャメラマンの仕事に似ているのかもしれない。喜怒哀楽を冷静に感じ取り、立体的に写し取っていく。自分が観察者であることが大切です。自分が悲しいとか怒っているとかは二の次なんです。

小川
私が小説を書いているときもまさにそう。登場人物と、書いている自分とに、いかに適切な距離を取るかというのが非常に重要な問題なんです。粘土の人形みたいなものがあって、直接書き手の自分が手を加えて動かせていけたら楽なんですけど、それでは書けない。レンズなりなんなり、作品世界と自分の間になにか1枚あって、じっと観察している。そのとき自分の心の中は客観的で論理的な自分でないと物語は動いていかない。

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by BlueInTheFace | 2005-01-28 02:08

レアル・マドリッド対マジョルカ/嘉人、仕事をこなすの巻

リーガ・エスパニョーラ第20節、レアル・マドリッド対マジョルカ@サンチャゴ・ベルナベウ

首位バルセロナが前日に行われたラシン・サンタンデール戦に完勝し、レアルとしてはこれ以上勝ち点差を離されるわけにはいかない。ホームで、格下マジョルカ相手にきっちり勝ちを収めたいところだ。しかしレアル・マドリッド・キラーの異名を持つマジョルカ、新戦力の嘉人を加え、今日も一泡ふかせたいところだ。

レアルはダイヤモンド型の中盤の底に、新加入のグラベセンをワンボランチとして配置。右にベッカム、左にジダン、そしてトップ下にフィーゴの布陣。対するマジョルカ、先発のFWは、エースのルイス・ガルシアと、ハンブルガーから移籍してきたロメオのツートップ。膝の怪我が完治してない嘉人は、ベンチスタート。

試合は、予想通りレアルのペース。マジョルカは中盤から激しくチェックに行くが、レアルのパス回しに翻弄され、ゴール前に追いやられている感じの守備。フィーゴやロナウドのドリブルをとめられず、前半からマジョルカはファールが多くなる。マジョルカはカウンターで攻撃をしかけるが、巨人グラベセン率いるレアルの中盤をなかなか打開できない。

前半33分、執拗にペナルティ・エリアに侵入してくるレアルの攻撃に耐えられず、マジョルカのDFがロベルト・カルロスにエリア内でファール。これがPKになり、フィーゴが決めてレアル先制。しかしマジョルカは前半40分、ゴール右隅の角度の無いところからのFKを、DFカンパーノが直接決めて、同点。GKカシージャスの逆をつく、見事なFKだった。

後半19分、ロメオに代わり、ようやく嘉人登場。この日のロメオも、前節同様決定的な仕事が出来なかった。ゴール前で張っている事が多いロメオのプレースタイルは、レアル相手にゴール前までボールを運べないマジョルカの攻撃では、孤立してしまう。しかし嘉人投入後も流れは変わらず、レアルの攻撃が続く。点が入らない事に焦りを感じ始めたレアルだったが、結局後半34分にサムエル、そしてロスタイムには、途中出場のソラーリに点を決められ、3-1でレアルの勝利。

嘉人は、念願のレアル戦に出場こそしたものの、何もする事ができなかった。しかし彼は、最低限の仕事はこなした。それは、サンチャゴ・ベルナベウの観客からブーイングを貰う事である。

まず交代出場時にブーイングを貰う事に成功(これは名誉な事だ)。その後、レアルの選手と競り合いながらタッチラインを割ったボールが、レアルボールのスローインと判定されるや否や、嘉人はそばにあったボールをレアル陣地に蹴りだした。これでブーイング2個目。そして同点の状況の中レアルが焦り始めた頃、嘉人はスローインのボールを投げに行き、なかなか投げないばかりか、結局投げず、そばにいた選手にボールを手渡しする。これでブーイング3個目。サンチャゴ・ベルナベウの雰囲気に呑まれる事無く、ふてぶてしい顔つきでブーイングを貰うあたり、日本にいる頃と全く変わってない。いや、イエローカードは貰っていないのだから、成長の跡すら窺える。さすがとしか言いようがない。

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by BlueInTheFace | 2005-01-25 00:39 | サッカー

初蹴り

今日は本年度最初の草サッカー。試合の予定は無く、基礎練習とミニゲームで、軽く汗を流す・・・ハズだった。

14時に河川敷集合だったのだが、今日は一段と寒く、途中で小雪がちらつくほど。入念なストレッチの後、まずは正月休みを挟んで鈍った体を温めるべく、キャプテンの合図に合わせてターン・ダッシュを数本やったのだが、これが相当きつかった。ダッシュなんて、高校生の時以来だ。高校生メンバーにとっては軽い準備運動だったらしく、終わったあとも涼しい顔をしていたが、30過ぎのオッサン達は、皆息をゼェーゼェーいわせて走っていた。僕の体は、もう充分温まり過ぎた。

その後、パスやトラップの練習、4対2のボール回しを経て、ミニゲームへ。10分を4本、計40分。ミニゲームとは言えやるからには勝つ!と皆で気合を入れ、フリー・ランニングを怠ったりすると怒鳴り声が響く。軽く汗を流すどころか、このくそ寒い中、もうこれ以上汗なんて出ない位走った。結局3-2で負けて、バツゲームの腕立て伏せ20本をやる時には、腕がプルプル震えだしていた。

去年までキャプテンを務めていたI氏の家庭に、子どもが誕生したこともあって、今年からは新キャプテンK君が音頭をとることになったのだが、去年と同様、いやそれ以上に厳しい練習内容だ。しかし、やり概があるし、なによりサッカーは楽しい。皆上手いやつばかりだが、レギュラーを目指し普段の走りこみはしっかりやろうと思った。ただ朝が寒くて、なかなか布団から出られないのが難点だが・・・

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ラブ・アクチュアリー

監督・脚本:リチャード・カーティス
キャスト:ヒュー・グラント 、リーアム・ニーソン 、エマ・トンプソン 、アラン・リックマン 、コリン・ファース 他

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総勢19人の主要キャストが繰り広げるアンサンブル・ラブストーリー。『ブリジット・ジョーンズの日記』の脚本家リチャード・カーティスが初監督を務め、秘書への恋心に悩む英国首相、愛する妻と子供がいるにもかかわらず部下に誘惑される会社社長、恋に臆病なOLなどの恋模様を綴る。『トゥー・ウィークス・ノーティス』のヒュー・グラント、『パイレーツ・オブ・カリビアン』のキーラ・ナイトレイら、実力派出演陣の豪華競演を楽しみたい。(Yahoo!ムービー 解説より引用)


基本的にこの手のラブコメは大好きで、期待どおりの面白さだった。当然、ハッピーエンドになる事を期待してるし、それを予想の上で観ているのだが、そもそもラブコメを観ようとする人の中で、全く救われない悲劇の主人公を観たいと思う人は、まれだろう。

19人それぞれの恋愛模様が、テンポ良く2時間強のストーリーの中に収められている。また、9.11以降のアメリカやイギリスに対する、政治的な風刺も込められていたりして、監督のちょっとした遊び心も窺える。個人的には、リーアム・ニーソン扮する作家と、スペインから来た家政婦の、フランスでの恋のエピソードが印象に残った。

何も考えず、ただただハッピーな気分になりたい時には、最高の映画だと言えるだろう。
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by BlueInTheFace | 2005-01-23 01:25 | 映画・TVなど

最近マイブームのモノマネ

「RICHARD HALL」というフジテレビの深夜番組をご存知だろうか。くりぃむしちゅー、中川家、劇団ひとり、おぎやはぎ、森三中、アンタッチャブル、という豪華メンバーがコントを繰り広げる、あの番組である。(RICHARD HALL ホームページ

あの番組内に登場するキャラクターの一人に、アンタッチャブルの山崎扮する下衆ヤバ夫という男が登場するのだが、これが最近、我が家のブームなのだ。

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『下ネタの「下」に公衆便所の「衆」と書いて…下衆です』といって登場する彼のコントの最大の魅力は、アドリブで歌いまくるオリジナル・替え歌(下品)。その替え歌の出来はともかくとして、我が家で流行っているのは、彼が登場する際の「下衆です」という台詞のモノマネ。

上の写真のように、極力アホ面をキープしつつ「下衆です」と言うのだが、コツは「す」の発音を、英語の「TH」を発音する時のように、舌を歯につけて言う事だ。言う場面は特に決まっていない。思いついた時、気の向くままに言ってみよう。

例:会社から帰ってきて「ただいま~」と言う代わりに、「下衆です」と言いながらドアを開ければ、例え喧嘩真っ最中の夫婦だろうと、とたんに笑顔の食卓になるはずだ。

ちなみに僕の中で去年流行ったモノマネといえば、サッカー日本代表DF田中誠のモノマネを、「ヒロシ」風にアレンジしたもの。「マコトです。日本代表のレギュラーなのに、実況で名前を呼ばれる事がほとんど無かとです!マコトです、マコトです・・・」
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by BlueInTheFace | 2005-01-22 02:13 | 映画・TVなど

ヒトラーとスターリン(下)

アンソニー・リード/デビット・フィッシャー共著、根岸隆夫訳、みすず書房

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 独ソ不可侵条約の締結からわずか1週間後の1939年9月1日、ドイツ軍は宣戦布告なしにポーランドに侵攻し、第二次世界大戦が始まった。ヒトラーとスターリンは条約の秘密の付属議定書に、両国の東ヨーロッパでの勢力圏をすでに定めていた。

 「条約締結からの22か月間を、多くの国家を駒に見立てて2人の独裁者が指した恐ろしいチェスの試合にたとえるならば、この戦争はそれぞれの軍隊を武器として戦った2人の男の死闘だった」(本書、エピローグ)

 下巻では、対戦勃発から、1941年6月22日、ヒトラーが周到な準備の後、条約を一方的に破棄してソ連を急襲した<バルバロッサ作戦>発動の日までを追う。この日、669日間の「ありうべからざる」同盟関係が終焉したのである。

 一方、不可侵条約締結についてまったく知らされていなかった日本の平沼騏一郎内閣は、「欧州の天地は複雑怪奇なる情勢」と慨嘆して総辞職、その後の日本軍の作戦が大きく左右されることになる。

 第二次世界大戦とはいったい何だったのだろうか。
(巻末より)

まったく、何だったのだろうか。かつての、王家が支配していた封建的社会がおわり、「国家」という枠組みが出来上がろうとする過渡期の中で、第一次大戦を経て、時代は遂にヒトラーという狂気の男を生み出してしまった。民主主義、社会主義、そしてファシズムが台頭し、理想と希望に燃えていた時代は、その裏側に潜んでいた絶望にとって替わられてしまった。この戦争を、時代のせいだけで片付けてしまうのは愚かな事だと思う。しかし大きな歴史の流れに照らし合わせながらこの戦争を振り返る時、たとえヒトラーやスターリンが生を受けてなかったとしても、領土争いによる大きな戦争は、いずれ何処かで勃発する事が避けられなかったのではないか、とも思う。

この世の中、憲法とか条約とかでいろいろ定められて、規制に縛られて、一見秩序正しいように感じるけれど、それを創ったのは紛れもなく僕たち人間で、人間あっての社会であって、そして僕たち人間はいともたやすく約束を反故にできる、恐ろしい生き物なんだという事を、この本を読んで感じた。
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by BlueInTheFace | 2005-01-21 02:27 | 読書

ヒトラーとスターリン(上)

アンソニー・リード/デビット・フィッシャー共著、根岸隆夫訳、みすず書房

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 第二次世界大戦中のヨーロッパ。1941年6月22日早暁、東ヨーロッパで史上最大の軍事作戦が始まった。ドイツ軍300万がソ連に侵攻した、いわゆる<バルバロッサ作戦>だ。その日からドイツの敗退まで4年、そしてその間にソ連の2000万の命が失われた。

 スターリンはなぜ、この急襲にそれほど無防備だったのか。あらゆる情報網を通して十分な情報を得ていながら、なぜすべての忠告を無視したのか。なぜ最後の瞬間まで、ヒトラーに石油、穀物、軍事物資を供給しつづけたのか。理由は、1939年8月23日に2人の独裁者が電撃的に結んだ独ソ不可侵条約にあった。

 この<悪魔の契約>に賭けた両者の思惑は何だったのか。本書は、BBCのドキュメンタリー制作者2人の手になる刻一刻のドキュメントであり、膨大な資料をもとにその背景を探り、全容の解明にはじめて挑んだ迫真の歴史読み物。上巻は、条約締結という<死の抱擁>の瞬間まで。
(巻末より)

ドイツのヒトラーとソ連のスターリン、そしてその部下達を中心に、ぎりぎりの状況下での駆け引きが繰り広げられる。と同時に、イギリス、イタリア、フランスといった大国の首相とその部下達が、それぞれの「お家の事情」を抱えながらも、利権を守りつつ、戦争回避にむけて奔走する、「外交」という視点に立ったスリリングな歴史読み物である。

印象に残ったのは、スターリン及びロシア人が抱く、ヨーロッパ諸国からの「仲間外れ意識」が根強く存在した事。しかしそう思われても仕方が無いくらい、ヨーロッパの大国たちはロシア人をあからさまに信用していなかった。端的な例は、1938年のミュンヘン協定に、敢えてソ連を参加させなかった話。

チェコの領土を狙い軍事力を行使せんと意気込むドイツに対し、大国間で交わされたミュンヘン協定は、チェコを無条件でドイツに引き渡す、というものだった。戦争は回避されたが、ソ連は地政学的に危険な状況に追い込まれ、(ドイツは「チェコ以外の領土には感心が無い」と公言していたとはいえ)ドイツとの関係がより緊迫したものになってしまった。それにも増して、この両大国の睨み合いにはさまれる格好になってしまったポーランドが、(最初は自分たちもチェコの領土を要求していたとはいえ)あまりにも気の毒だ。こうなる事が予測できていたのに、あえて(話がややこしくなるからと)ソ連を呼ばず、ミュンヘン協定を推し進めた大国の身勝手さは、自国の平和を強く望んだ民衆の意思が反映されたとも言え、民主主義政治の怖さが垣間見えているとも思う。

ちなみにこのミュンヘン協定の調印が行われる最中、チェコの代表団は会議室に入る事を許されず、別室で自国の運命が決まるのをただ待っているだけだった。
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by BlueInTheFace | 2005-01-19 19:50 | 読書

バルセロナ対レアル・ソシエダ

リーガ・エスパニョーラ第19節、バルセロナ対レアル・ソシエダ@カンプノウ。

前節、リケルメ率いるビジャレアルに完敗を喫し、2005年のスタートでいきなり躓いてしまったバルサ。今シーズン負け無しのカンプノウで巻き返しを計り、前節の悪夢を払拭したいところだ。CLの決勝Tで対戦するチェルシーのジョゼ・モリーニョ監督や、オーナーのアブラモビッチ氏が観戦に訪れる中、キックオフ。

試合は前半4分、エトー→ロナウジーニョ→イニエスタとパスが繋がり、ペナルティエリア内でソシエダのDFルイス・アウベルトがイニエスタの足を引っ掛け、これがPKの判定。これは微妙な判定で、そのまま流してもいい局面のように見えたが、調子の上がらないバルサにとって、兎にも角にもPKをGETできたのは大きい。

しかしこのPK、エトーがポストに当てて、失敗!蹴る前のエトーの表情には、若干の迷いも見られた。このPK失敗を機に、バルサはこの先、苦しい戦いを強いられる事になる。

前節出場停止だったジオとベレッチがスタメンに復帰したが、替わりにこの日のバルサにはデコがいない。中盤のピボーテの位置には若き天才イニエスタが入っているが、やはりデコ程の攻守にわたる活躍は望めないし、そもそも比べるのは酷な話だ。ロナウジーニョも、調子は今ひとつパッとしない。

ボールは相変わらずバルサが支配するものの、ソシエダも人数をかけた分厚いディフェンス網を敷き、時折鋭いカウンターを浴びせる。GKビクトル・バルデスはこの日も忙しい。最近のバルサは、浅いディフェンスラインを破られてピンチを招く事が多く、これは中盤でのプレスが甘くなっている証拠だ。さらに、高さに不安のあるバルサのセンターバックに対し、コヴァチェヴィッチのようなデカいFWは、ソシエダにとって有効なターゲットになる。

試合は後半16分、ソシエダのプリエトがこの日2枚目のイエローカードで退場、10人になる。バルサの猛攻は、一段と激しさを増すが・・・。19分のエトー、角度の無い所から強引にシュートを打つが、これまたポスト。22分にはコーナーキックから、プジョルが右足で合わせるが、枠の外。頭を抱えるプジョル。後半27分の時点で、バルサのボールキープ率は何と72%!! しかし点は入らない。そんなバルサをあざ笑うかのように、途中出場のFWニハトがカウンターでスルスルと抜け出し、GKビクトル・バルデスと1対1に!ニハト、シュート~~~!!

しかしこれをビクトル・バルデス、体に当てて防いだ~!そしてその直後のバルサの攻撃、シャビの蹴ったコーナーキックを、マルケスが頭で逸らし、そこに飛び込んできたエトー、たおやかに体をしならせ(mohaさん)ヘディングシューーーート!ゴラッソーッ!!!!遂にソシエダのゴールをこじ開けた!

試合はこのまま1-0で終了。前節の汚名返上、とまではいかない内容だったが、とにかく勝った。そして見てる方とすれば、ドラマチックないい試合だった。しかし、この日スタンドで観戦していたチェルシー関係者は、「バルサ恐るるに足らず」と思ったかも知れない。ふふふ、作戦どおり。敵に、好調時のバルサを全てお見せするわけにはいかないのでね。

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by BlueInTheFace | 2005-01-19 03:30 | サッカー