「プルートウ」を読んで

chiering-ringさんのところで、浦沢直樹氏の「プルートウ」の話題が出ていたので、彼の描く漫画をこよなく愛する僕は早く手に入れて読みたかったのだが、豪華版の値段が僕には高すぎたので、やむなく通常のコミックスを買った。

鉄腕アトムの「地上最大のロボット」を原作とした、人間とロボットが共存する世界を描く戦慄のミステリー。僕は手塚マンガをほとんど読んだ事が無いので、当然物語の結末もわからず、純粋にこの先どういう展開になるのか、楽しみだ。

「プルートウ」を読んでみて、さすが浦沢直樹と唸るしかなかった。ハラハラドキドキの、そして読者を焦らすだけ焦らして後でスッキリさせる絶妙なストーリー展開は、「YAWARA」、「HAPPY」、等の作品で随所に見せてくれている。しかし「プルートウ」は、「モンスター」や「MASTERキートン」でみられるように、また一味違う魅力の浦和直樹ワールドが満載だ。

人間と同じ感情をもったロボット達、しかしロボットゆえ、基本的に口数が少なく表情の変化はない。そこで、読み手の僕らがロボット達の感情を汲み取り、それが物語りの幅を自然と広げていく。浦沢直樹にこういう「物言わぬ嬉しさ、悲しさ」を表現させたら、(僕が読んだ数少ない漫画家達の中では、であるが)右に出るものはいないだろう。

絶望を知りつつも「敢えて」希望を捨てない、といった浦沢直樹の楽観主義。また、困難な時こそ人間らしく生きようと説く、性善説に基づいた彼の作品世界。これは、手塚治虫を敬愛する佐野元春の生み出す曲の世界と共通するところが多くて、僕としては非常に興味深い。

浦沢直樹や佐野元春といった、手塚マンガに影響を受けて育った世代。その彼らの作品を享受している僕らもまた、間接的に手塚氏の影響を受けているのだろう。改めて、手塚治虫という人の偉大さを感じた。

仮死911さんにトラバ

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by BlueInTheFace | 2004-11-07 20:21 | 読書