怒りをぶつけてしまった

昨日の午前1時。夜勤の僕はその時会社にいて、何とはなしにフロアの窓から外を眺めていた。すると、道の向こうから一人の若い男がこちらに歩いて来て、会社の玄関前で立ち止まるのが見えた。何奴だと思ってしばらく見ていたら、彼はなんと、その場でおもむろに立ち小便を始めた。

僕は急いで会社の階段を駆け降り、玄関のガラスドアを開け、すぐ目の前にいるその若僧に向かって「てめぇはここで何やってんだぁ!」と怒鳴った。かなり驚いた様子の若者は、急いで立ち小便を止め、「すみません、本当にすみません」と何度も頭を下げ、逃げるようにその場を立ち去って行った。

何とも釈然としない気持のまま僕は自分のフロアに戻った。すると丁度その時、中くらいの大きさの茶色いゴキブリが、フロアの真ん中の通路をテクテクと歩いているのを発見した。僕は丸めた新聞を手に取ってそのゴキブリに近付き、「うりゃあ!」とゴキブリに一撃を食らわせた。ゴキブリは、仰向けにひっくり返って完全に息絶えた。

しかし僕は、仰向けになったまま動かないゴキブリをしばらく見ているうちに、何だか気の毒な気分になってしまった。よく見ればカワイイ奴じゃないか、とすら思えてきた。「お前は、何も悪くなんかない・・・」僕は、若造に対する怒りをゴキちゃんにぶつけてしまった自分に不甲斐なさを感じ、同時に申し訳ない気持ちでいっぱいになったんだ。僕はA4のコピー用紙を取り出し、ゴキちゃんの死骸をそっとすくい上げた。そしてその紙でゴキちゃんを優しく包み込み、ゴミ箱へと丁重に葬った。仕事に集中しよう、僕は自分にそう言い聞かせてデスクに戻った。

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