義姉の苦悩

今年の僕のゴールデンウィークは、時折サッカーに興じる以外は、その殆どを家の掃除に費やしていた。妻と長男が5月6日に退院予定で、しかもその日に合わせて、山口から義母と義姉が上京する予定だったので、何が何でも掃除しないわけにはいかなかったのだ。

退院前日の5月5日は掃除で完徹になってしまった。と言うのも、ベビー服の収納スペースを確保する為に、大人の服の整理を始めたのだが、いざ始めてみたら結局は、ちょっと時期の早い衣替えになってしまい、その衣替えに莫大な時間がかかってしまったのだ。そのおかげで、洋服ダンスは随分とすっきりしたが、変わりに僕の疲労は今日まですっきりする事がなかった。

さて今日は、義母の付き添いで上京してきた義姉が、義母を東京に残して、一足先に山口へと帰る日であった。会社に休暇をもらっていた僕は、義姉と一緒に東京駅までお見送りに。東京駅に着くと、義姉はまず、大丸デパートの地下街でお土産を購入。欲しい物が決まっていたのか、買い物はほんの10分程度で終わってしまった。新幹線の発車時刻まではまだ一時間残っている。すると義姉は、ニヤつきながらも瞳の奥にキラリと光る何かを忍ばせ、僕にこう言うのだった。「さてミツくん、どうする?」

前回姉が上京してきた時に、東京見学にさんざんつき合わされた僕には、義姉の微笑みの意図するところがすぐに読み取れた。「新丸ビル、行ってみる?」そして僕らは、新幹線の発車時刻ぎりぎりまで新丸ビルでのウィンドウショッピングに興じた。そして彼女は東京を去っていった。今日見て回れなかった4Fより上のフロアは、次回上京した時の楽しみにとって置く、という言葉を残して。

姉のお伴をするのは、次回も間違いなく僕の役目。なぜなら彼女にとって僕は、東京で荷物持ちを頼める唯一の男性であると同時に、エスカレーターに乗る事ができない彼女をエスコートする役目も担っているからだ。エスカレーターの前で二人並んで一度立ち止まり、僕と義姉は「せーの!」と二人で声を合わせる。同時に僕は義姉の背中を押す。でもたいていは「せーの!」のタイミングで乗る事ができず、僕が先に乗ってしまい、義姉は次の段でかろうじて乗る事ができるのだった。

ウィンドウショッピングが大好きなのにエスカレーターには乗れない、義姉の苦悩は一生涯続く・・・。

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