あんたの声はすぐ分かる

先日の夕刻、会社でふと携帯を見てみたら、着信履歴が4件も入っているのに気がついた。1分置きにかけられたその電話は全て実家からのもので、その内一件は留守電に「電話ちょうだい」と入っていた。なにやら嫌な予感がした僕は、仕事を一時中断して実家に電話を入れた。

「もしもし、どうしたの?」
「あんた、今日家に電話した?」
「してないよ、仕事中だし」
「そうよね、じゃぁやっぱり・・・!」

そう。この日の3時頃、僕を偽って実家に電話をかけた相手は、「オレオレ詐欺」師だったのだ。以下、母親が再現してくれた、詐欺師と母親のやりとり。

「もしもし、オレだけど」
「ミツ?」(実際には母親から「ミツ」とは呼ばれてません)
「そう。ゴホゴホッ!・・・ところで、今まで使ってた携帯を解約して、新しいのに変えたから、番号を教えるよ。090-××××-××××。ちゃんとメモした?」
「うん大丈夫。それよりあんた、声がおかしいよ」
「ゴホゴホッ!風邪が酷くてね。じゃ、そういうことだから。」

と言って、そいつはおもむろに電話を切った。

怪しいと感じた母親は、解約したとされる僕の古い携帯に電話をかけてみた。それが僕の携帯に入っていた冒頭の4件の留守電だったのだ。ちゃんと繋がったことでますます不信感を募らせた母親は、父親に相談を持ちかけた。すると父親はすぐにそれが「オレオレ詐欺」だと気付き、「オレがそいつの新しい番号に電話してやる!」と鼻息荒く受話器のボタンを押した。

「もしもし、ミツか?」
「どうしたの?」
「おまえの古い携帯に電話してみたけど、繋がるみたいだぞ!」
「ちょうど今から解約するところなんだよ」
「そうか。それよりおまえ風邪は大丈夫か?母さんが凄く心配してるぞ。」
「あぁ・・・」

そしてそいつは、無言のままに電話を切った。

僕は電話で母親に「よかったね、騙されなくて」と言った。すると母親は「あたりまえじゃない。いくら風邪が酷いからって、あんたの声かどうかぐらい、母親なんだから聞けばすぐに分かるわよ」と得意になるのだった。そこで僕はその日の夜、試しに母親に電話を入れてみた。その後どうなったか、少し心配でもあったからだ。

「あ、オレオレ」
「・・・・・・」(ぴーんと張り詰めた、緊張感漂う静寂)
「・・・もしもし、オレだけど」
「・・・・・・・・・どちら様ですか(ボソッ)・・・・・・・・・」


その次の日、詐欺師から電話が一度かかってきたらしいが、「あ、お客さんがきたから切るよ」と適当にあしらったら、その後は一度も電話をかけてこないという。

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