笑顔になれなくて

僕は仕事柄、雑誌やポスターなどで展開される商品広告をよく目にするのだが、KDDIの携帯の広告で、中田喜子バージョンと松下由樹バージョンがあるのを知って、何気なく両者の笑顔を見比べてみた。松下由樹の場合が、喜びを顔全体(というか全身)で表現しているのに対して、中田喜子の場合は、幸福感に満ち溢れつつもどこか憂いを帯びた表情をしていた。どちらも素晴らしい役者だ。特に中田喜子のあの憂いの表情は、さすが長年に渡って橋田寿賀子ファミリーでいるだけあるなと思った。

二人のことをさすが女優さんだなと思ったのは、僕が今日モデルデビューを果たしたことに起因していた。今日僕が午後から会社に出勤し業務をこなしていると、突然、常務とともにカメラマン数人が表れ、常務が僕の元に歩み寄ってきて「モデルよろしく♪」と僕に言ったのだった。

話によると、現在作成中の会社案内のパンフレットに掲載予定の、仕事場風景を撮影するとのことだった。僕がモデルに選ばれた理由は、僕が社内随一のイケメン社員だから・・・ではなく、僕のデスクの周辺が撮影に最も適したアングルだったという、ただそれだけの理由だ。

というわけで撮影開始。三脚にプロ使用のデジカメをセットし、フラッシュと共にパシャ、パシャ・・・。僕は、デスクに座ってパソコンをいじっているフリをしながら、じっと静止していた。プロのカメラマンにとってもらうという非日常的な体験。そして固唾を飲んで見守っているギャラリー。静寂に包まれた社内に、シャッターを切る音だけが響く・・・。僕は緊張で顔が引きつりそうになるのを何とか堪え、エビちゃんも真っ青になるほどの笑顔を振りまこうと試みた。だがその試みは全くの無用だった。何故ならカメラマンが位置していたのは僕の斜め後ろだったから。真正面のモニターをしっかと見据えた僕の顔が、パンフレットに掲載されることはあり得ない。。。

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