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ギルバート・グレイプ

ギルバート・グレイプ

1993年/アメリカ
製作総指揮・監督:ラッセ・ハルストレム
製作総指揮:アラン・C.ブロンクィスト
出演:ジョニー・デップ/ジュリエット・ルイス/メアリー・スティーンバーゲン/レオナルド・ディカプリオ/ダーレーン・ケイツ/ローラ・ハリントン/メアリー・ケイト・シェルハード/ジョン・C.ライリー/クリスピン・グローヴァー/ケヴィン・タイ

身動きできないほど太ってしまった過食症の母、18歳で知的障害をもつ弟アーニーと、2人の姉妹。田舎町アイオワ州エンドゥーラで、亡き父の代わりに一家を支え、希望や夢を抱く暇さえない日々を過ごすギルバート。だが、自由で快活な旅人ベッキーとの出会いが、彼の心に少しずつ変化もたらした。(以下略/Amazonレビューより)


レンタルビデオ店でDVDを物色していて、面白そうだと直感したこの作品。鑑賞し終えて、まずは自分の直感が外れていなかったという幸運を喜んだ。映画にしてもドラマにしても、世界中から、数多くの様々な作品が配信されている中で、僕は自分の好む作風の映画を迷わず見つけられたことの幸運に感謝したいと思った。

ギルバート(ジョニー・デップ)は、家族と故郷を大切にする、純朴で心優しい青年。だがそれとは裏腹に、折に触れ、ギルバートの心にすっと現れて彼を悩ます、人妻ベティ(メアリー・スティーンバーゲン)との火遊び、未だ見知らぬ遠くの町への憧憬、知的障害のアーニー(レオナルド・ディカプリオ)に対する疎ましさ。それらは全て、ベティー(ジュリエット・ルイス)との出会いによって呼び起こされてしまった、ギルバートの持つもう一つの顔だった。彼の心の葛藤が、ラッセ・ハルストレム監督による絶妙な映像と間で描かれていて、まるで観ている僕たちの心を試しているかのようだ。

物語終盤での“火葬”シーンは、自分に正直に生きたいとするギルバート青年の、決意の象徴であったと同時に、嫌な過去を全て葬り去りたいと願う彼の狂気の一端が、顔を覗かせた瞬間でもあったと思う。このシーンに象徴されるように、この映画は、僕たちの心に無数に内在する二律背反を、包み隠さず嘘偽り無くサラリと表現してくれている。いい映画とはそういうものだと僕は思っている。詩や音楽、写真や絵画にしてもそれは同じだ。

ジョニー・デップを始めとする、若き役者たちの好演が光る映画でもあった。特に、ジュリエット・ルイス演じるベッキーには、ギルバートでなくたって、僕でも参ってしまうのだった。僕はベッキーに出会えた事に対する幸運にも、感謝の念を示さなければなりますまい。

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by BlueInTheFace | 2006-02-02 02:19 | 映画・TVなど