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世直し源さん<ヨシイエ童話>

世直し源さん<ヨシイエ童話>全3巻
業田良家
著/竹書房文庫/2005年12月7日 初版

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『世直し源さん』は1989年末から1991年末にかけて週刊誌「ヤングマガジン」(講談社)にて連載された作品。

無口だがケンカには強く弱者には優しいステテコ姿の源さん(本田源太郎/52歳)は、現職の内閣総理大臣。5人の妻を抱え、重婚の罪を背負っている男。閣議で「国会議員根性たたき直し法案」を提案し、国会演説で「国民のためになる独裁政治を行う」と宣言する。政界で孤立を深める源さんだが、彼の信念は少しも揺るがない・・・。

バブル時期の連載当時から15年が経ち、政治・経済の状況が当時とは随分違うものになってしまった現在に於いても、この物語の持つ普遍性は少しも揺るがない。それは、いつの世にも存在する「この国をもっと良くしたい」という想いを、「大人の童話」として描いているから。業田良家は、政治とりう堅苦しく説明過剰な話に陥りがちなテーマながら、簡潔で分かりやすく、笑いと感動を織り交ぜた爽やかな読み物に創りあげてくれた。一言で言えば、すごく良質なコメディ。そして、僕らに社会の様々なことを問題定義してくれる本でもある。

と、僕がこの本について色々語るよりも、次の文がこの作品の魅力を端的にあらわしていると思う。単行本の帯に掲載されていた、作家の岡田斗士夫氏による紹介コメント。。

現代日本人のための『クリスマス・キャロル』
政治評論家は言うだろう。
「ふうん、上手く政治知識を混ぜ込んでマンガに仕立てたね」と。
ベテランのマンガ読みは言うだろう。
「業田といえば『自虐の詩』で決まり!『世直し源さん』?政治パロディだっけ?」と。
騙されてはいけない。このマンガの価値はそんなもんじゃない。
『世直し源さん』は大人の寓話である。笑いと韜晦〔とうかい〕の中だけで、語られる真実とは・・・
利権と権力にすがりつくだけの政治家などいない、ということ。
社会的正義を訴えたいだけのジャーナリストもまたいない、ということ。
奇跡なんてないけど、ひとりの心を動かすことはできる。
そして世界は人の集合体であるから、できないことなんてないんだ、ということ。
寒い夜にこそ、政治を、そして人間を考えたい。『世直し源さん』、一気に読むことをオススメする!


by BlueInTheFace | 2005-12-27 02:08 | 読書