クラシコ ~マドリディスタの賞賛~

リーガ・エスパニョーラ第12節、レアル・マドリッド対バルセロナ@サンチャゴ・ベルナベウ。伝統の一戦「クラシコ」に、今年も世界中のサッカーファンの注目が集まった。第11節の時点でレアル3位、バルサ2位。お互いに調子がいいままクラシコに望めるだけでなく、レアルはロナウドが怪我から復帰し、バルサもデコが怪我から復帰と、両チームともこのクラシコに向けて好材料が揃った。

キックオフ直後から、ホームのレアルは積極的に仕掛けてきた。普段のレアルとは違い、足元ではなくスペースを狙ったパスを意識した攻撃。アウェイのバルサはレアルの出足を警戒し、あまり前線に人数をかけず、基本的にはカウンター狙い。序盤は互角の主導権争いとなった。しかしレアルはバルサの最終ラインを破ることができず、しだいにバルサが主導権を握るようになる。

その立役者はバルサの前線の3人、エトーとロナウジーニョ、そしてこの大一番にジュリに代わってスタメンに抜擢された、アルゼンチンの若き天才リオネル・メッシだった。バルサがレアルからボールを奪い、前線にパスを供給する。その時、この3人の誰がボールを持っても攻撃の起点になることができた。レアルはこの3人から容易にボールを奪うことが出来ず、ファールで止めるのが精一杯だった。

エトーとロナウジーニョは言うに及ばずだが、それにしてもメッシのトラップの正確さ、ドリブルのコースどりの判断と一瞬のスピード、そしてこの大舞台での落ち着きはらったプレーぶりは尋常ではない。テクニックはあるものの、時にボールを持ちすぎてチームのリズムを壊してしまうレアルのロビーニョが、いまいち波に乗り切れないのとは対照的だ。

前半15分、そのメッシが右サイドでボールを受けドリブルを開始すると、レアルのディフェンスは最前線のエトーに引きずられるようにズルズルと下がってしまい、一番近くにいたロベカルもチェックに行かず、スピードに乗ったドリブルを許してしまった。そしてペナルティエリア付近でエトーとスイッチすると、エトーは一瞬のスピードでレアルDFを振り切り、トゥーキックでカシージャスのタイミングをずらしてゴールを決めた! 静まり返るサンチャゴ・ベルナベウ。

この後、前半の殆んどの時間をバルサが支配し、0-1のまま前半終了。前半30分にはメッシの惜しいシュートがあった他、バルサにいくつものチャンスが訪れ、いつ追加点が入ってもおかしくない状況だったが、とにかくレアルはバルサを1点で抑えることが出来、後半に巻き返しを計る可能性を残した。

両チームともメンバー交替のないまま後半突入。流れは相変らずバルサのままだった。レアルの攻撃を司るはずのジダンは、トップコンディションには程遠いように見えた。バルサは前半の途中から、シャビやデコも積極的に攻撃に参加するようになり、攻撃に厚みが増していた。もうどちらがホームだかわからない状況に陥っていた。レアルは何とか反撃に転じようとするが、バルサにボールを持たされている感は否めない。さらに不運なことに、ラウルがシュートを空振りしてしまった際に左足を痛めてしまった。水曜日にはW杯出場を決め、木曜日には双子の男児(エクトル君とマテオ君)が生まれて、公私ともに絶好調に見えたラウルだったが、この日は仕事をさせてもらえないまま、前半13分にグティと交替となった。

後半14分、バルサはカウンターから、ロナウジーニョがスピードに乗ったドリブルを仕掛ける。ロナウジーニョとマッチアップしていたサルガドは、攻撃に参加していたため前線から戻ってこれなかった。ロナウジーニョはセルヒオ・ラモスをあっさりと交わしペナルティエリアに侵入すると、切り返しでエルゲラを交わし冷静にゴール隅に流し込んで2点目!レアルはかなり苦しい状況に追い込まれた。

尻に火がついたレアルは、中盤の底パブロ・ガルシアを下げてバチスタを投入。1点返せばまだ勝負の振り子はどちらに転ぶかわからないと、果敢に攻撃を仕掛けた。しかしバルサの守備に綻びは見られない。ボールを失った際の切り替えが異常に早い。中盤でのチャレンジ&カバーを徹底し、その間に最終ラインを整えマークを離さない。ゴール前の危険なエリアには、名手プジョルがそびえ立つ。もう一人のCB、エジミウソンも絶好調のようだ。やはり彼はピボーテの位置よりも最終ラインのほうがいい。後半24分、ジダンのスルーパスをロナウドが受け、ゴールを決めたかに見えたが、これは無情にもオフサイドだった。バルサは決してラインを下げることをしなかった。バルサ先制の時、レアルがズルズル下がってしまったのとはあまりにも好対照だ。

バルサはメッシに替えてイニエスタを投入したが、それは逃げ切りの為の交替などでは決してなかった。まるでミニゲームのように敵陣でパスが繋がり、バルサのショータイムの様相を呈してきた。片やレアルはバチスタのヘディングシュート、サルガドの左足のシュートも実らず、時間だけが過ぎていき、そして後半33分、決定的な3点目をバルサに与えることになってしまった。

それは2点目の時と全く同じ、カウンターからのロナウジーニョのゴールだった。サルガドは攻めあがっており、ロナウジーニョの前には広大なスペースが空いていた。スピードに乗ったロナウジーニョのドリブルをセルヒオ・ラモスは捕まえられず、難なくゴール。セルヒオ・ラモスは2度もロナウジーニョにブッちぎられたばかりではなく、1点目の場面でもエトーとメッシのどちらをマークするか迷ってしまい、結果的にエトーの突破を許してしまった(いやこれはエトーの突破を誉めるべきか)。素晴らしい才能に恵まれたセルヒオ・ラモスだが、大成するにはもう少し経験を要さなければならない。

この3点目で勝負はついた。信じられないことに、このロナウジーニョのゴールの後、サンチャゴ・ベルナベウのマドリディスタから拍手が起こった。スタンディング・オベーションまで起きている。それは敵ながらあっぱれとバルサを賞賛すると同時に、愛する我がチームへの痛烈な皮肉となった。勝負はついたが、しかしまだ試合は終わっていない。レアルの選手達は何とか顔を上げ、この屈辱に必死に耐えていたが、もう反撃の余力は残されてなく、ただ試合が終わるのを成すすべなく待っているだけ。試合前「たとえ試合に負けても、自分たちのサッカーが出来ないよりはマシ」と語ったデコだが、バルサは90分間自分たちのサッカーをやり通して、最高の結果を残した。90分間何もさせてもらえなかったレアルのイレブンは、ブーイングの嵐に包まれた試合終了後、悔しさを噛み殺しながらバルサの選手たちを讃えていた。

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by BlueInTheFace | 2005-11-21 00:49 | サッカー