ハイビジョン特集 輝く女・いま 矢野顕子

2004年4月にNHK-BSで放送された「ハイビジョン特集 輝く女・いま 矢野顕子」を見た。すっかり見るのを忘れたまま1年半の歳月が流れてしまい、危うく「日本対アンゴラ」のショボい試合を上書きしてしまうところであった。

NYでプライベートライフに密着し、矢野顕子の根底に流れる「本物へのこだわり」に迫ります(矢野顕子オフィシャルHPの番組紹介より抜粋)

彼女の「本物へのこだわり」は、彼女の生活にもよく表れていた。自宅のあるマンハッタンの街を、その場限りの即興で出来上がった歌を口ずさみながら闊歩し、美しい街並みや、センス溢れる看板のロゴに心ときめかす。自宅近くのチェルシー市場では、量り売りの青菜を、立ち寄った花屋では自宅に飾る花を、真剣にしかも楽しそうに選ぶアッコの姿が印象的だった。尽きることのない彼女の「美」「生」へのこだわり。表現することへの飽くなき欲求。それは彼女の日常の全てから育まれている。

NYの郊外にある、古い納屋を改造した専用スタジオにて、アッコは一人ピアノを弾き語り、数ヶ月後に控えたライブをイメージしていた。懸命に「そこにある音」を探している模様だったが、しかしアッコの表情は、まるで音が訪れるのを“待っている”ような感じで、少なくとも僕には音を“探している”ようには見えなかった。もう少し具体的に言うと、ピアノを弾いている彼女は一応譜面を見てはいるものの、視線の先はその譜面にはない。彼女の五感全てが彼女の目となって、彼女の周りに存在する、空気や、匂い、微粒子の振動すら感知しながらピアノを弾いているようで、その姿はほとんど瞑想状態に近い。

スタジオで彼女は幼い頃のエピソードの一つを語ってくれた。幼稚園の遠足の帰り、アッコは家に着き母にその日あった事を話す。母が今日はどうだったの?の聞くと、アッコはピアノの前に座ってチョコチョコと演奏を始め、これこれこうだったよ、と母に報告した。母は、ふーんそうだったのと頷く。彼女にとってピアノとはそれほど自然な存在なのだという話だ。例えば絵の得意な子どもが、絵を描きながらその日のことを母に報告する。それがその子にとってはごく自然な事であるように、アッコもまた、ピアノと共に自分を表現することは彼女にとって当たり前の事なのだ。

番組の最後に、彼女お気に入りのライブハウス「Joe's Pub New York」での演奏が披露された。『Over』という曲で、「悪い時は過ぎたよ 今からもっとよくなっていくんだ」と歌うサビの部分は圧巻。彼女の“表現したい”という想いがビシビシと伝わってきて、ベースとパーカッションが加わり圧倒的なスケールに仕上がった演奏には、胸があつくなった。

彼女の素顔の魅力が存分に伝わる、優れたドキュメンタリー番組だと思った。アッコファンならずとも是非一度は見て欲しい作品。何度か再放送しているらしいので、もしかしたらまたやるかも(でももう1年半も経っちゃったからなぁ・・・汗)。
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by BlueInTheFace | 2005-11-19 09:06 | 映画・TVなど