佐野元春×中村一義(3)

佐野元春と中村一義による長い対談を、独断と偏見でピックアップし、強引に短くまとめてお届けしている今回の企画もいよいよ最後。本当は全部アップしたいところだが、著作権に引っかかってしまうのではないかと危惧したので、このような形を取らせていただいた。二人のソウルがたっぷり詰まった素晴らしい対談の模様を、わずかではあるが心ゆくまで堪能して欲しい。

◆例えば中村君の、あの<さあ!>という言葉とかっていうのは、日本語としてっていうだけではなく、僕等が生きている感覚としての、日本語を超えたある種の言語としての快感というのを、僕は日本でやられてる気がするんですよ。
佐野:「そうそう。僕も感動した。”虹の戦士”の中の、あのリフレインの<平気>とか。平気なんて言葉、英語にはないよね。だけども彼の声と音楽を伴って、<平気>とリフレインされると、それは例えば敢えて、米国の言葉に翻訳するとしたらば、イッツ・ゴナ・ビー・オーライだとか。それと同質の感情を放ってる」
◆そうですね。
佐野:「でも今まで<平気>なんていう言葉をリフレインの頭に持ってきたソングライターがいるかっていうと・・・いなかったんじゃないかな。僕流に言わせてもらうと、そこに発明があるんだな」
中村:「そうですね、でもそれを手にしてからも、それは足を手に入れただけって感じで(笑)。そっからまた歩いていかなければいけないっていうのはありますね。だから僕なんかまだ3年とか4年とか歩いてきただけなんで、この先大丈夫かなっていう感じはありますけど(笑)」
佐野:「僕は大丈夫だと思う」
中村:「あははは」

>僕なんかまだ3年とか4年とか歩いてきただけなんで
中村君のこの台詞に、長年音楽業界の第一線で活躍してきた佐野元春への、気遣いと敬意が凝縮されている(笑)しかしホント、僕もこの<平気>というリフレインを聴いた時にはビックリした。お見事としかいいようがない。

◆あなたにとっての最大の恐怖とは何ですか?
中村:「ははははは。なんだろう?恐怖・・・人に心がなくなる事が恐怖ですね。死が怖いとかじゃなくて、心が抜けちゃう事がやっぱり怖いですね」
佐野:「うーん・・・ほら、こうやって複雑な世の中になってくると、疑心暗鬼になってくるじゃない。自分が信じてるものにも何か疑いを持ったりとか。なんか、一筋縄では生きていけないような。でもなんでこんなに気ぃ遣わなきゃいけないのかなって、生きていくのに。僕、最近そう思うんだよね。僕たちは、そんな気を遣うために生まれてきたんじゃない。もっと本来あるビューティーや何か・・・本来ある生や美と出会うために生まれてきたんだっていう感覚をね、絶対忘れたくない。世の中がどうなっても、どう絶望しても、自分の事騙してでもそういう風に思い続けていきたいって、そう思う。質問の答えになってるかな?」
◆ええ、ジャストです。
中村:「全く僕も同じですね。だから3rdアルバムで思ってた事は、ほんとそういう事だし。感覚っていうものを忘れちゃいけないし、そこで美しいって思うものも、絶対、どんな世の中にだってあるっていう確信でしたね」

感覚っていうものを忘れちゃいけないと二人は言うが、その感覚を持ち続ける事がどんなに難しいか、充分に理解した上での発言だけに、余計に心に響く。
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※2005年現在中村君は100s[Hyaku-Shiki]公式HP)という名義でバンド活動中です。
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by BlueInTheFace | 2005-11-11 23:20 | 音楽