全部聞こえてるよ

今日は、早朝から町内会の集まりで、町内の草木に薬剤を散布してまわった。普段はそういった町内会の集会などには参加してないのだが、この日は重いリアカーを運びながら町内をまわるということで、若い男の手を借りたいと、地区部長のTさん(女性:推定60前後)から直々に申し入れがあったこともあり、初めて町内会の企画に参加した次第だ。

なるほど、待ち合わせ場所に行ってみると殆んどの人が高齢者の方で、彼らから見れば僕は若く、それだけの理由で僕は頼りになる存在と見られていたのだ。

一緒に薬剤を散布してまわった男女合わせて8人のメンバーの中には、地区部長のTさんの姿もあり、この女性はとても気さくで、気が利いていて、明るく、お茶目で、気がつくといつの間にかチームの中心になっているような存在だった。さすが地区部長を10年以上努めているだけのことはあるなぁと、普段からいつも僕は感心していたのだった。

さて、朝から蒸し暑い中でみな汗だくになり、一時間半ほどで薬剤の散布が終わると、手土産のお菓子とお茶を持って家路についた。そして帰るや否や、まだ収めていなかった町会費(今年は僕が近所の町会費を集金する当番で、毎月5日までに地区部長のTさんに届ける)を持って、Tさんの家を尋ねたのだった。

Tさんの家の玄関の前に到着すると、中からはシャワーをひねる音が聞こえてきた。僕は、もしかしたらTさんはこれからシャワーを浴びるか、もしくは今浴びている最中かもしれないと思い、ドアホンを鳴らすことを躊躇したのだが、結局押した。するとすぐにシャワーの音が止まり、Tさんがドアホン越しに応答してきたので、僕が町会費を持ってきたことを告げると、「あら、ちょっと待っててね、ウフ♪」と言った。

そしてドアホン越しに、ガサゴソという音が聞こえてきた。おそらく、彼女は服を着ているのだろうと僕は思った。彼女はドアホンのスイッチを切り忘れていた為、僕と応答した後も音声が接続したままの状態なのに気付いていないようだ。彼女は「ウフッ♪」とか「クスッ♪」と笑いながら着替えている様子だった。僕は「何がそんなに可笑しいのだろうか」と、一瞬立ちすくんでしまった。

バスタオルを羽織っただけのTさんが玄関に現れたら、僕はどんなリアクションをすればいいのかと途方に暮れていた時、Tさんが普通に部屋着を着て出てきたので、僕は一安心した。僕は玄関に上がりこみ、少し世間話をして、Tさんの家を後にした。Tさんはこの後、取り溜めしたビデオを見ながらのんびり日曜の午後を過ごすのだという。それは何よりだと僕は思った。

[PR]