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夜と霧

夜と霧<ドイツ強制収容所の体験記録>
V.E.フランクル(1905-1997)著/下山徳爾 訳/みすず書房
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この本は、人間の極限悪を強調し、怒りをたたきつけているが、強制収容所で教授が深い、清らかな心を持ち続けたことは、人間が信頼できるということを示してくれた。この怖ろしい書物にくらべては、ダンテの地獄さえ童話的だといえるほどである。しかし私の驚きは、ここに充たされているような極限の悪を人間が行ったことより、かかる悪のどん底に投げこまれても、人間がかくまで高貴に、自由に、麗しい心情をもって生き得たかを思うことの方に強くあった。その意味からフランクル教授の手記は現代のヨブ記とも称すべく、まことに詩以上の詩である。(裏表紙/野上弥生子氏評)


心理学者フランクル氏による、強制収容所の体験記録。彼は極限状態にありながらも、極めて冷静な観察眼をもって、この地獄に住む人間を考察し続けた。

僕がここで多くを語るより、機会があれば是非あなたにも読んで欲しい。

やっぱり語ろう。


この本は、あくまでも「強制収容所における体験記録」であり、戦争反対云々を語る本ではない。収容所の悲惨さについて語る本でもない。そういった本は、既に巷に溢れるほど出版されている。この本は、収容所で「生活」する、加害者・被害者を含めた「人間」そのものをテーマにしている。

彼らは、もはやたった一つの目的・・・「今日一日を生き延びる」為の、ありとあらゆる闘い・競争に打ち勝たなければならなかった。自分と、収容所内の親しい人と、そして外の世界で待っていてくれる(はずの)肉親の為に、生き延びたいと願うのだ。そして、自分が生き延びるということは、その分他の誰かが割りを食うということを、皆が理解していたのだった。なぜなら親衛隊にとって、囚人をガスかまどに輸送する際に重要だったのは、「誰が」送られるかということではなく、その「人数」こそが全てだったのだから。囚人の中には、生き延びるためには仲間を売ることさえ怯まなかった人々がいたのである。しかしそういった人たちを含めて、一体誰が、この地獄を生き延びようともがく彼らを責めることができようか。

プロローグでフランクル氏は語る。「最もよき人々は帰ってこなかった」

by BlueInTheFace | 2005-08-24 22:37 | 読書