最近恥ずかしかった事

 会社の後輩H君(25)と最寄駅まで一緒に帰ったある日の事。彼は女っ気があるのか無いのかよく分からない、謎の私生活を送っている男だったので、僕は「おまえ、本当はもう彼女の一人くらいいるんだろう」と聞いてみた。するとH君は「いや本当にいないんですよ」と慌てて否定する代わりに、最近カワイイなと思っている人がいると白状したのだった。その彼女とは、駅と会社の中間地点に位置するコンビニで働く佐藤さん(仮名)という、年の頃は26、7位の、滝川クリステルにちょっと雰囲気の似た綺麗系のお姉さんだった。

 僕達はその話以来、仕事が一段落つくと、事あるごとに「佐藤さんにどうやってアプローチをかけるか」について作戦会議を開いていた。こっそり店の外に呼び出して食事に誘う、というのが一番現実的な方法に思えた。しかしどんな作戦であれ、失敗したあかつきには、毎朝通うそのコンビニに行き辛くなってしまうという懸念を、彼は拭う事が出来なかった。僕は「男ならやるだけやってみろ」とハッパをかける程度の事しか出来ずにいた(決して面白半分でからかっているわけではい)。


 さて、つい先日の事。H君より一足先に仕事を終えた僕は、H君のもとに歩み寄りこう言った。「お先に失礼します。さぁH君、僕を佐藤さんだと思って、ありったけの笑顔で『おつかれさまでした♪』って言うんだっ!」
 仕事中以外は、大抵アホ面でいることが多いH君だが、そして実際にアホなのだが、時に女の子に、真顔で優しく言葉をかけてあげられるようになれば、普段のアホ面とのギャップによる相乗効果で、H君の魅力はぐんとアップするに違いないと思ったのだ。するとH君は一瞬動揺しながらも、先輩である僕の命令に逆らえないと腹をくくったのか、やや間をおいて、そして僕の目をまっすぐに捉えて言ったのだった。

「・・・おつかれさまです・・・(ニヤリ)」

しかし、そう言って僕を見つめるH君は、あきらかに恥ずかしがっていた!耳が少し赤くなっているような気さえした。僕を相手にこんなに恥ずかしがっているようでは、いざ佐藤さんに話し掛けようという時が思いやられる。いや、H君は逆に僕が相手だから恥ずかしかったのだろうか。僕は、微妙に照れが入っているH君の視線をマトモに受けられずに、くるりと背中を向けて「じゃ、お先♪」と会社を後にしてしまった。どうやら彼の恥ずかしさが伝染して、僕まで赤面してしまったようだ。はたから見たら、怪しい二人に思われてもおかしくない。

がんばれH君。自信のない男はモテないんだぞ!

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