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ガラスのジェネレーション

ガラスのジェネレーション
さよならレボリューション
つまらない大人にはなりたくない
so one more kiss to me

ご存知、佐野元春初期の代表作『ガラスのジェネレーション』の一節。元春は敢えてこの曲に「つまらない大人にはなりたくない」というフレーズを入れ、1980年代を迎えたばかりのティーネイジャーたちはこのフレーズにこぞって熱狂した。僕もリアルタイムではなかったが、初めてこの曲を聴いた時はかなりのインパクトを受けた記憶がある。この「若者の気持ちを代弁する」手法のソングライティングのヒットで、エピックソニーも随分と気をよくしたに違いない。

しかし元春は「つまらない大人にはなりたくない」というフレーズに、いつしか縛られるようになってしまった。世の中や大人に対して唾を吐くイメージが先行してしまったのだ。もちろん大多数のファンはそうした過剰なイメージに惑わされること無く、元春の曲が持つシニカルなメッセージやユーモア、ストーリーテリングに心動かされていたのだが、しかし一般的な社会の反応は、佐野元春を「社会に反旗を翻すだけの愚かな若造」と捉えていたのだ。

確かにこの曲の歌詞だけを見れば、世の大人にそう解釈されても仕方のないように思える。しかし、これは音楽なのだ。メロディーに乗せてこの歌詞を口ずさんでみれば、この曲のサビにはどこか悲しげな響きが漂うことに気付く。そう、この歌は、「つまらない大人にはなりたくない」と叫び、嘆く一方で、「でも僕たちは大人になっていくんだよ」と半ば自覚し、そんな自分を客観的に見つめている歌なのだ。ゆえに最後の「so one more kiss to me」のフレーズが余計に悲しみを誘う。この歌が名曲中の名曲たる所以だ。

実は最初に聞いた時、この曲の持つ悲しい響きが僕には理解できず、それが解ったのは十九、二十歳の頃だったのだが、それからは余計に、佐野元春という男が創り出す曲の魅力にとりつかれてしまった。『サムデイ』の悲しい響きを感じ取ることができたのもこの頃だ。それまで世の中の表面的な響きにばかり囚われていた僕は、何だかカルチャーショックを受けた気がして、世界が一気に広がったのだった。

by BlueInTheFace | 2005-02-26 21:56 | 音楽