親切のつもりが・・・

い゛ででで・・・よりTB。chiering-ringの話を読んで思い出した出来事がある。

あれは10年程前の2月、たしか土曜日だった気がする。前の日から一日中降り続いた雪もようやく止んで、この日の東京は青空が広がっていた。道路は一面の銀世界。雪に慣れていない僕等は、転ばないよう慎重に歩きながらも、ワザと新雪の上を歩いたりしながら、久しぶりの雪景色を楽しんでいた。

会社は「はんどん」で、まだ日が高いうちに仕事も終わり、僕を含めた4人の仲間が、駅への道をゆっくりと歩いていた。すると突然、30~40メートル程離れた曲がり角から、自転車のブレーキの音がキキーーッと鳴り響くのが聞こえてきた。雪に静まり返った住宅街だったので、その音はとても綺麗な音色で、ガシャーンという音と共に僕たちの元へ届けられた。

若い女性が雪に身を埋めて、動かない。カーブを曲がろうとして、転んだ様子だ。僕たち4人は立ち止まり、固唾を飲んで見守っていた。辺りは静寂に包まれていた。彼女はまだ動かない。僕は思わず、大声で叫んだ。

「大丈夫ですかーーーっ!!!!」

すると彼女はムクッと身を起こし、小さく片手を挙げて、頭をコクッと頷かせた。あぁ、大丈夫なんだ、と思った瞬間、僕には分かった。いや、分かってなかったのは僕だけだった。他の3人はとっくに気付いていた。彼女は恥ずかしいのだ。だから僕たちが通り過ぎるまで、雪に顔を埋めてそのままやり過ごそうとしたのだ。

一瞬、僕たち4人と彼女との間に、妙な間が生まれた。僕は、その間に耐え切れなくなって、堪えきれずに、つい吹き出してしまった。

「ぷぷーーーっ!!!!」

それにつられて、他の3人も大爆笑。皆、涙目になってヒーヒー笑っている。「お前、何笑ってんだよ!失礼じゃないかよー!」と、先輩が僕の頭を小突く。「一番笑ってるのは、あんたじゃんかよー」と僕は心の中で叫びつつも、笑いが止まらない。そして、バツが悪そうにしている自転車の彼女の視界から、僕たちはフェード・アウトしていった。豪快な笑い声だけを、その場に残して。


今更だけど、謝るよ。ゴメンねあの時の自転車の彼女。僕たちは、君を笑ったんじゃない。あの状況が、可笑しかっただけなんだ。といっても、君は分かってくれないだろうね。

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