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美しき敗者

こんばんは。長いこと放置していてすみません。

南アW杯の決勝が素晴らしいゲームになる事を期待しつつ、久々の記事をエントリーしたいと思います。ネタはもちろんW杯、準決勝のドイツ対スペインを見た感想です!



ドイツ対スペインの準決勝。思いのほかドイツが守備的だったので、見ているこちらとしても意表を突かれました。しかしドイツが後半の早い時間帯に交代カードを切ったのを見てから、僕は次第にスペインの勝利を確信するようになりました。

今大会のスペインは、派手な勝利こそ無いものの、接戦をキッチリとモノにして勝ち上がってきました。思うように実らなくても我慢の攻撃を続け、相手のスタミナが持たなくなる時間帯に、寄り切ってしまう強さがあります。ドイツが早い交代カードを切ったのは、おそらく「ガス欠」を心配しての事でしょう。しかしその交代はナイーブなドイツの心情の表れであり、少なくともポジティブな決断ではないように思えます。

スペイン代表は、メッシこそいないもののスタイルは「ほぼバルサ」のようなチームです。正攻法で相対しても勝てる可能性が低いことは、一昨年シーズンのCL決勝でマンUがバルサに完敗した事でも明らかです。守備の組織を入念に構築し、それを忠実に実行し、スピードに乗った鋭いカウンターを食らわす。これが殆ど唯一の勝ちパターンであることは、モウリーニョ監督率いるインテルが見せた戦いぶりからもまた明らかです。

守備の組織を入念に構築する時間があり、またコンディション調整の時間に恵まれたスイスは、GKのファインセーブにも助けられ、素晴らしい勝利を手にすることができました。しかし長丁場のW杯でコンディション的に余裕が無いドイツは、スイスのようにはいきませんでした。そもそも、スイスは美しいラインディフェンスとカウンターが信条のチームであったのに対し、ドイツは元来守備的なチームではありません。

歴史的な側面でみても、ドイツは「侵略国家」であり、また「強国」である事を誇りとするお国柄です。サッカーの試合においても、ドイツが勝つときは大抵「どうだまいったか俺たちはドイツだ!」という勝ち方をします。つまりドイツはそういう国民性なのです。

そんな彼らが、自分たちの信条を曲げて守備的な闘い方をしたところで、たかが知れています。彼らはそもそも「プライド」を捨てる事ができないのです。戸惑った彼らは、出足で一歩遅れてセカンドボールを拾えず、結果的にスペインの猛攻を浴びる事になってしまいました。終わってみれば、ドイツは自分たちの力を充分に発揮できないまま負けてしまった、という印象が残ります。同じく準決勝で敗退したものの最後まで勝利への執念を見せたウルグアイとは違い、ドイツは「美しき敗者」になる事ができませんでした・・・。

スペインは、大会を通して、愚直なまでに自分たちのスタイルを貫き通しています。それも、自分たちの力を過信する事なく、ギリギリのリスクマネジメントを行った上での事です。歴史的にもかつて「無敵艦隊」と呼ばれたスペインは現在、経済的には危険な状況に追い込まれながらも、サッカーにおいてはまさに「無敵艦隊」です。貫き通すことの美しさをスペイン代表は教えてくれている気がします。



さて、決勝のオランダ対スペインが大変楽しみです。両者の実力は「互角」というのが直感的な印象です。ポゼッションはスペインだと思いますが、オランダはドイツと比べると、もっとタフでしたたかな戦いをしてくるような気がします(前回大会のオランダ対ポルトガル戦の死闘を思い出します)。僕の心情としては、自分たちのスタイルを貫き通して優勝するスペインの姿が見てみたいのですが・・・。いずれにしても、素晴らしい試合になる事を期待しています!それと今大会を最後に引退を表明しているジオが頭突きで退場にならない事を祈っています(笑)


by BlueInTheFace | 2010-07-09 00:51 | サッカー