かわいいおばあちゃん

先週の後半あたりから急に仕事が忙しくなり、今週が夜勤のローテーションである僕は、こんな時間(AM10:00)まで残業をする羽目になってしまった。青白い顔で皆におはようの挨拶をして、僕は家路についた。

しかし今日は二ついい事があった。一つ目は、仕事が終わらずに会社に泊まる事になってしまったI部長(56)が、夜勤の僕の為に焼き鳥を買ってきてくれた事だ。何気ない心遣いが嬉しくて、頑張ろうという気持ちがみなぎってきた。

二つ目は、会社を出て駅のホームで帰りの電車を待っている時。僕はジュースの自動販売機の横に寄りかかり、よく晴れた青空を見上げながら眠い目をこすっていた。すると物の影からヒョイっと小さなおばあちゃんが出てきて、甲高いしゃがれた声で「お兄さんちょっとごめんね」と僕に声をかけてきた。

彼女は掃除のおばちゃんだった。僕がいた場所にはゴミやらタバコの吸殻やらが落ちていて、それを拾いたかったのだ。僕が退くと、おばあちゃんは手際よく箒でその場を掃いた。とても小さなおばあちゃんだったが、背筋はわりと真っ直ぐ伸びており、動きも機敏だった。

可笑しかったのはこの後だ。掃除をしているおばあちゃんを何気なく見ていたら、彼女は急に僕を見上げてこう言った。「お兄さん、もう終わったよ。元に戻りな。ここがあんたのポジションだよ」と自販機の横を指差した。僕は言われるがままに、そのポジションに位置取りした。彼女はそれを見届けると、ニッコリと微笑み、また何事も無かったかのように掃除の続きを始めたのだった。


他愛無いやりとりだったが、仕事で疲れた心が、何故か癒された。きっとあのおばあちゃんは、世の中の事なんて何もかもお見通しなのだろう、と思った。

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